オレは学生時代から英語が堪能で
ハッキリ言って小学生の時にはそこらの英語の教師を凌駕していた。
この前(と言っても2ヶ月くらい前)とある受け持ちではない女子生徒が
英語の小論文対策で英作文を受講しているのだが、その英作文の添削で
「これで×を下されたけど、間違ってるんですか。tough ではなくhardだろう、なんでyouがでてくるんだ、to forgetからhardの主語表現は文法的におかしいとか散々言われたんですが・・」
とオレに最終審判でお伺いを立ててきた。
オレは結構とっつきにくいと学生から思われているらしいが
こういう質問はかなりの信頼を持たれているらしく、最終審判で利用されることが良くある。
「知らん」 とはさすがに言えず、良いか悪いかだけは答える。
内容はハッキリと覚えていて
その英作文は高校生が書くようなレベルではなかった。
何でこの子が小論文対策を受けているのだろうかと逆に訝った。
それほどのレベルだった。だから鮮明に覚えている。
Even in tough times like these, it is important you are positive about your jobs
and try to improve the quality of your work in any way you can.
And to forget the world when working hard is often an exellent cure for depression.
(こうした厳しい時代でさえ、人が仕事に前向きに臨み、出来る限りの方法で仕事の質を改善していこうとする姿勢は重要だ。さらに一心不乱に仕事に没頭することは、しばしば鬱病の優れた治療法となる)
×を下されていたのは
1・・tough
2・・you
3・・to forget~hard
オレの答えは
「×を下したセンコーが無能だ。」
理由も説明した。
・toughについて
なかなか一般的ではないが
取り扱う問題、時期的に困難な状況を示す場合のtoughがある。
よってtough timeは正しい。
・youについて
youには一変的な人を示すyouがある。
その場合のyouは訳さない。この場合のyouもそうだろう。
寧ろ、ここでwe(われわれ)を使うと仕事をする人間、生き抜く人間も限定される感もあるのでオレもyouで適切だと判断する。
・to forget~hardについて
大学受験ではまず東大の長文でも出題されない表現。
この表現で「~に没頭する」という表現があるのは知っている。
従って間違いではない。×を下した者が知らないだけ。キミがそういう無知な担当に就いたことが不運としか言いようが無い。
その女子生徒は「聞いてよかった」と安堵の表情で納得して去っていったが
同時にオレは
「コレこそ受験英語の弊害だな」
と改めて思った。
というのも、受験の世界に居る講師のほぼ9割9分はその世界に精通する必要があるので、どうしてもそこで通用するだけの知識しか蓄えない。必要な知識だけを取り入れ、不必要な知識は排除する必要がある。
もっと分かりやすく言うと
試験に出る(出そう)な内容を吸収し
出ない(出そうに無い)内容は吸収しない
という割りきりが必要になる世界なのだ。
だから、受験という世界には
どうしてもバイアス(弊害)が大きくかかる。
本来ならば
受験に出る出ない関係なく
表現を幅広く吸収していくのが本当の言語を学ぶ目的だと思う。
そこを
「アレは出ない」
「コレは出る」
「コレは必要」
「アレは不必要」
こういう選別を行う世界では
どうしても知識に大きな偏りや弊害が出るのは当たり前だ。
日本人が言語に対して表現が豊かではない、永年言語を勉強しながら進歩が乏しい理由はこういうことも一理原因としてあると思う。